東京地方裁判所 昭和25年(ワ)2080号 判決
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〔事実〕原告は昭和十六年中本件土地を当時の所有者池野某から賃借し、地上に登記した建物を所有していたが、右建物は昭和二十年三月戦災によつて焼失した。ところで右土地所有権は訴外池野から訴外古井を経て脱退被告保倉へ昭和二十二年十二月四日売買により移転せられ、(同日登記ずみ)脱退被告保倉は昭和二十五年五月二十三日引受参加人山崎へ売却し(同月二十六日登記ずみ)山崎は地上に二階建建物を建築所有したが、同人は本件土地及建物を昭和二十六年十月二十日引受参加人中川へ売却し、同日各所有権移転の登記をした。本件土地の所有権が順次移転せらるゝと共に原告との間の本件土地賃貸借契約の賃貸人の地位もこれに伴つて順次承継せられたものである。引受参加人山崎から同中川への本件宅地の所有権移転は処理法第十条に示す五年の期間の経過後である昭和二十六年十月二十四日であるが、右所有権の移転は原告の正当なる賃借権の行使を妨害する意図の下になされたもので、このように悪意の取得者である引受参加人中川は右条文によつて責任を免がれることはできないと主張し、右土地の賃借権の確認を求め、引受参加人中川に対しては建物の収去土地明渡を求めた。
〔判断〕原告敗訴。判決は原告の主張を挑斥して、処理法第十条所定の期間経過後に宅地について権利を取得した者の善意悪意を問はず従前の借地権者はもはやかゝる第三取得者に対しては処理法第十条に基いて自己の借地権を対抗し得ない旨を判示した。曰く。「処理法第十条は、本来なら借地権者が借地権自体について登記をなすか、そうでなくとも借地上に建物保護法に基いて登記した建物を所有するときは第三者に対して借地権を対抗しうるという原則に対する例外を設けた便法であると解されるのであり、第十条によつて借地権を対抗される第三者は昭和二十一年七月一日から五年以内に宅地について権利を取得した者に限定したのであつて、右期間経過後である昭和二十六年七月一日以後において宅地につき権利を取得した者が、たとえその取得がなんらかの悪意に基くものであつたとしても、従前の借地権者はもはや斯る第三取得者に対しては前記処理法第十条に基いて自己の借地権を対抗しえないものと解すべきである。」